映画『沈黙のパレード』(原作:東野 圭吾)の感想【ネタバレなし】

作品のあらすじ

この映画は天才物理学者の湯川学(ゆかわ まなぶ)が殺人事件の謎を解明する物語です。

ある日、3年前に失踪した少女が遺体で発見されます。 容疑者として浮上したのが蓮沼(はすぬま)という男でしたが、事件に黙秘したことで証拠不十分で捕まることなく釈放されました。

しかし、その蓮沼が殺されてしまいます。 蓮沼の殺害に関与したのは少女殺人事件の被害者家族やその知人ら商店街の人たちでした。復讐による殺害が疑われたのですが全員にアリバイがあります。

殺害を実行したのは誰か。

愛する人を守るために、沈黙する人々。

沈黙に隠された真実に、湯川が迫ります。

感想

天才物理学者が解き明かす殺人事件のサイエンス トリックと、事件に関わる人達に心を動かされる物語で、期待通りの作品でした。

冒頭のシーンで、ある歌の歌唱シーンがあるのですが、もうそこから涙が溢れそうで、 映画館という大迫力の特別な空間で聴くすばらしい歌声に感動する物語のはじまりでした。 ただその歌声の主は被害者となりミステリーは展開します。

映画を通じて印象に残ったのは、登場人物たちの哀しみです。 その哀しみを生じさせる理由はもちろん殺人事件なのですが、犯人が明らかになったとしても、誰も救われません。 人が人を殺すというのはとにかく誰も何も幸せにしない出来事だと思います。

本作のキャッチコピーにある「沈黙は、連鎖するーそれは罪か、愛か」というように、「沈黙」によって誰かをあるいは何かを守ろうとして、それが罪なのか愛なのかを訴えかけてきます。

今回は湯川の親友でもある刑事・草薙(くさなぎ)に強く関係するストーリーで、彼の登場が多いです。

草薙は過去の事件で蓮沼(はすぬま)を有罪にできませんでした。蓮沼を捕まえることができていれば今回の殺人事件が起こらなかったと考えられ、自責の念が溢れています。

草薙には怒りや恨み、憎しみが入り乱れた表情が多く、草薙の悔しくて泣きそうな顔がスクリーンに大写しになるたびに、こちらも同じような感情に呑み込まれました。 その感情を湯川にぶつける場面があり、胸が締め付けられました。

ガリレオシリーズの主役である湯川(ゆかわ)と内海(うつみ)は、安定したコンビという感じです。

探偵役となる湯川は、いつもどおり天才的な頭脳を活かして蓮沼が殺された謎を解き明かします。 科学的な謎以外に事件そのものについても論理的考察から真犯人に辿り着きます。東野圭吾作品の特徴といいますか、湯川が真実と人情に葛藤するシーンはやるせない思いになります。

内海のほうはベテラン刑事になっていて、おっちょこちょいな部分がなくなり、仕事が洗練されていました。今回は目立った活躍はなかったです。

キャストには、主演の福山雅治さんや柴咲コウさん、北村一輝さんのほか、殺された少女の家族や身の回りの人たちは主役級の役者ばかりで演技も圧巻です。

家族や仲間に対する愛、人殺しへの憎しみがものすごく伝わってきました。 こうした迫真の演技を体感するのが、映画や舞台を観賞する魅力ですね。

というわけで、映画館でもう一度観たいですし、DVD/Blu-ray になったら手に入れようと思える作品でした。

おわりに

エンディングで流れる主題歌のKOH+「ヒトツボシ」も劇中の人物を投影した歌で、しみじみします。

KOH⁺「ヒトツボシ」（映画『沈黙のパレード』Inspire Movie）

オフィシャルグッズのマグカップが欲しかったのですが私が行った映画館では売り切れでした。ブックカバーや作中のゆるきゃらグッズもありましたが結局グッズではなく原作の文庫本を買いました。

過去のガリレオシリーズの映画を観たことのない方は、2作品のネタバレなし感想もぜひご覧ください。

• 映画『容疑者Xの献身』(原作:東野 圭吾)の感想【ネタバレなし】
• 映画『真夏の方程式』(原作:東野 圭吾)の感想【ネタバレなし】

沈黙のパレード (2022)
満足度(最大星5つ)
	劇場版『沈黙のパレード』公式サイト

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