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ヴァン・ダイン/著の本格推理小説『 グリーン家殺人事件 』を読みました。
この本を選んだのは推理作家 S・S・ヴァン・ダイン の代表作だからです。ヴァン・ダインについてはミステリー関連の雑誌や文庫本の解説、推理作家のインタビューなどで名前が登場することから興味を持ちました。
この本は、ファイロ・ヴァンスという素人探偵が主人公の物語です。
ニューヨークのグリーン屋敷で二人の娘が銃で撃たれ、一人が死亡するという事件が起こります。
グリーン家の長男チェスターは、この事件の犯人をつかまえてほしいと地方検事のマーカムに相談します。 マーカムの友人で、事務所を訪ねている探偵ヴァンスは、チェスターの話を聞き、事件解明に乗り出します。
事件は最初の銃撃事件で終わらず、一家の人間が一人、二人と殺されていきグリーン家を皆ごろにしようとする人物がいることがうかがえます。
グリーン家と隠されたつながりを持つ料理人の女や、歩けないはずのグリーン夫人が歩いていたとの目撃証言など、難事件をヴァンスはどのように推理し解決するのか?
ニューヨークの古い屋敷内で起こる連続殺人事件という設定は本格ミステリとして申し分ありません。
長編小説で話は長いです。長編で本当に長いと感じました。読み終えるまでの時間に反してインパクトのある推理ではなかったのが正直な感想です。
「驚くべき真実」という最後の章で謎が明かされますが、とにかくそこまでの道のりが長く、推理について覚えていません。
探偵のヴァンスが、ある部屋を調べたことから事件解決が進んだはずなんですが、部屋を調べるきっかけやヴァンスのひらめきが分からず、そのあたりから惰性で読んでいた感じです。
仕掛けや目眩ましがあったように思うのですが、謎解きが記憶になく犯人も誰だったのかあいまいです。何のために読んでいたのか自分自身に問いたいです。
グリーン家には、主人である老婦人のほか、その子供たちがいます。グリーン屋敷には執事や料理人のほか、かかりつけの医者らが登場します。 年老いた女主人はそこそこに口汚く嫌われ者として推理小説にぴったりの人物です。
探偵役はヴァンス。 ヴァンスがどのような経歴を持っているのか読み取ることができませんでした。なので特徴がよくわからず、物知りで観察力が鋭いというだけの印象です。
ヴァンスの親友で地方検事であるマーカムも登場しますが存在感は無いです。
さらに、この小説は書き手がその事件現場にいて一部始終を見てきたという設定で、それが著者のヴァン・ダインという設定です。 このことで文章が読みにくいといったことはありませんが、時々でてくる「私」が誰なのか見失いました。
簡単に言うと「古臭い」のかもしれません。作品の発表が1928年なので古典に分類されます。
初めて読む小説って、書かれた時代がどうであれ自分にとっては新鮮なはずなのに、この作品は古い感じがしました。 古いことが陳腐で楽しめないことを意味するわけではありません。 事件が起こる舞台とか、翻訳文とか、物語の構成とかからの印象ですね。
話の途中で事件解決につながるわかりやすいヒントがぜんぜん出てこなくて、最後の最後に探偵がまくしたてるように事件を解決する構成がもどかしいです。 シャーロック・ホームズや名探偵ポワロなど海外推理小説はこのような構成の印象が強いです。
連続殺人事件が発生するものの、事件は二転三転することなく怖さも緊張感も無かったです。
「新本格」に分類されるトリッキーなミステリ作品をいくつも読んでいると、ただの「本格」で特に古い作品の推理やトリックは物足りないことがありますよね。 毎回、自分の経験や世界観がひっくりかえる内容を期待してしまうのは贅沢というのはわかっているんですが。。。
長い。話の展開に飽きてはいないが、長いことだけは覚えています。
みどころは96の文章からなる「要領書」だと思いました。犯罪や事件にかかわる事実を96個書いたものが物語の終盤に出てきます。 この一覧がヴァン・ダインの推理作家としての力量を示しているのでしょう。 しかし長い。事件を整理したから読者に推理して当ててみろと言いたいんでしょうけど、こっちは探偵じゃありません。
安易に古い推理小説に飛びつくと時間を無駄にします。 私はマニア気質なところがあるので、本格ミステリの技術書としてもう一度読むかもしれません。
さすがに本格黄金時代を代表する推理作家の評価を、一作読んだだけで判断するのはもったいないので、次は『 僧正殺人事件 』とやらでも読んでみたいと思います。
児童向けの本もあります。エッセンスを楽しむなら平易な文章で書かれたジュニア版で十分だと思います。ただし入手しにくいです。
グリーン家殺人事件 (創元推理文庫) (ISBN: 978-4488103033) | |
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最終更新日: 2023年02月26日(日) / カテゴリー: 推理小説・映画