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荻原浩(おぎわら ひろし)/著の推理小説『 噂 』を読みました。
この本を選んだのは、読者が選んだおすすめ推理小説ランキング で10人中4人の人がおすすめする作品にランクインしていたからです。
この本は、 小暮(こぐれ)という男性刑事が主人公の物語です。
ある日、足首が切り取られて無くなった女子高校生の死体が公園で発見されます。 担当となった小暮は女性警部補の名島(なじま)と事件解決に向けて捜査にあたります。
捜査を進めるうちに、犯人は「レインマン」の仕業であることを突き止めます。
レインマンは女子高生ならみんな知っている存在です。しかし誰も目撃したことがありません。 さらに、レインマンの噂は、とあるマーケティング会社が仕掛けた口コミの内容と同じだったことがわかります。
口コミになぞらえて起きた事件なのか、それとも犯人の手口が口コミによる情報操作に利用されたのか。
大人には見えない女子高生のコミュニティと、猟奇殺人がつながります。
この本は、帯や宣伝文句に「衝撃のラスト一行」とありますが私には衝撃を感じられませんでした。 ラスト一行に書かれたことの意味はわかりましたが、衝撃度合いは『 十角館の殺人 』や『 殺戮にいたる病 』に比べ物になりません。 というのも、伏線がバレバレなんです。 「衝撃のラスト一行」なんて煽るからラスト一行に向けたネタを探してしまって種明かしについては想像できてしまったんですよね。
ラスト一行とは別に、足首を切り取るという猟奇殺人犯の設定と、その真相の関係はまぁまぁ面白かったです。レインマンというのが、トイレの花子さんとか学校の七不思議といった怪談話と似ていて、狭い世界だけで広がる噂で、実際に起こりそうだからです。 狭い世界で悲劇が起きるのは2021年と2022年に話題になった トー横キッズ が代表的な例です。
良いと感じた点もあります。 この本は、大人の狡猾さと、お金欲しさに大人に利用される女子高生の稚拙さが上手く描かれているように思います。 そして、悪い奴から未熟な人間を刑事が守るという構図で刑事の正義を表現できていて、爽快で読んでいて気持ちの良いものでした。
また、妻を亡くしている小暮と、夫を亡くしている名島のコンビがラブロマンスをほのめかすストーリーも後味スッキリといった感じです。
物語では口コミマーケティング(販売戦略の手法)が題材になっていますが、この本のマーケティングは、私のような少し目が肥えたミステリーファンに対しては失敗しているように思います。
推理小説で安易に「どんでん返し」とか「衝撃のラスト」と言って、射幸心をあおってはいけませんね。
噂 (新潮文庫) (ISBN: 4101230323) | |
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満足度(最大星5つ) | |
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最終更新日: 2022年06月27日(月) / カテゴリー: 推理小説・映画