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有栖川 有栖(ありすがわ ありす)/著の推理小説『 孤島パズル 』を読みました。
この本を読んだきっかけは『 月光ゲーム 』に続く学生アリスシリーズの2作目ということで、『月光ゲーム』はコミック版でしたけれど楽しめたのでシリーズ作品を読もうと決めていて、最近になって文庫本を手に入れて読みました。
英都大学推理小説研究会に所属する江神二郎(えがみ じろう)と有栖川有栖(ありすがわ ありす。通称:アリス)が、同研究会に所属する有馬麻里亜(ありま まりあ。通称:マリア)に誘われて、マリアの伯父の別荘がある島で宝探しをすることになります。
別荘では江神とアリスとマリア以外に有馬家の面々が夏を過ごしているのですが、島に台風が接近した夜に殺人事件が起こります。
孤島となった環境で殺人犯は島に滞在するメンバーのなかにいるはずです。そんな状況で新たな殺人事件が起こります。
江神とアリスは、宝探しの手がかりとなるモアイ像のパズルに加えて殺人事件の犯人探しに挑戦します。
かなり濃い本格ミステリという印象で満足度の高い作品でした。
本のタイトルに『孤島パズル』とあるように、孤島での複数のパズル(謎)が提示されて読者への挑戦状へつながる構成となっています。
謎と手がかりの提示が終わる頃には、「時間をかけて取り組めば私でも解けそうなパズルだろう」と思いましたが、すべての謎が明らかになってその考えは甘かったです。
当然ながらそれぞれのパズルは、事実を寄せ集めて嵌め込めば解決となるわけですが、そのピースを集めるのが至難の業です。 二人の死体が重なっている理由なんかは「重なる」という物理的な現象以前に、「重なる必然性」みたいな、登場人物の関係性や殺害現場の状況を極めて広範囲で深いところにまで想像が及ばないとパズルのピースを手に入れるのは難しいと思いました。
それだけ難解なパズルの正解を知ったときは「綺麗」とか「美しい」といった感想です。
登場人物については、江神探偵とアリス助手といった関係で、強烈な個性は感じられません。良い意味で謎解きより印象に残らない存在です。ずば抜けて明晰な頭脳を見せるシーンもないので、大学生というのを意識して書かれているのかなと思います。 あまりにも知識が豊富だと学生らしくないですからね。
それと、ふたりは関西出身で関西弁を話すのが特徴です。 わたしは生まれも育ちも関西なのでセリフの関西弁が読みにくいといったことは感じませんが、関西弁自体が台詞に起こすと読みにくいというのが前提にあるので、うまく書かれているなと思います。 解説の光原百合さん も「関西弁で推理場面を描くのは相当な難事業なのです」と記されています。
とにかく本格ミステリということで謎解きにかかる部分が素晴らしく、証拠や事実の提示もミスリードの技法は用いられず、わかりやすい部類だと思います。本格ミステリ好きなら読んで損はないという一冊でした。 学生アリスシリーズは「読者への挑戦状」がある作品で、自分で謎解きを楽しみたいという人にもおすすめです。
なにぶん本格ミステリとしての完成度が高いので、次は学生アリスシリーズ3作目の『 双頭の悪魔 』を読んでみたいと思いました。
ちなみに、『孤島パズル』は 『The Moai Island Puzzle』というタイトルで英語版で出版 されたり、 漫画(全3巻)にもなる ほど人気のある作品です。
孤島パズル (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) (ISBN: 978-4488414023) | |
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満足度(最大星5つ) | |
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最終更新日: 2022年11月23日(水) / カテゴリー: 推理小説・映画